あんそる

ファイアーエムブレム封印の剣を徹底解説しています。
2002年3月29日にゲームボーイアドバンスから販売され、FEの面白さの醍醐味ですが、育成枠を鍛えて“自分の軍”を完成させていく感覚が非常に心地良いタイトルとなります。
ファイアーエムブレムエンゲージで、過去の主人公が紋章士として再登場したのをきっかけに、今までプレイしてきた過去作をもう一度振り返りたくなったので深掘りをしていきます。

 「ファイアーエムブレム 封印の剣」は、GBAで復活した“新章FE”の幕開けを飾った記念すべき作品です。主人公ロイは、まだ若く未熟ながらも、戦乱に沈むエレブ大陸を救うため仲間たちと旅立つ少年領主。重厚な戦争ドラマの中で、彼が迷い、学び、決断を重ねながら成長していく王道の物語は、現代のプレイヤーから見ても色褪せることがありません。

 本作は、シンプルな操作性とわかりやすい戦略性を両立した“GBAらしい完成度”が魅力。命中率や地形相性、武器三すくみを活かした戦略は非常に奥深く、ユニットの個性を把握して部隊を編成し、限られたリソースで勝ち抜く手応えがしっかり味わえます。また、仲間との支援会話や多彩なクラスチェンジ、分岐マップなど、遊びこむほど世界が広がる設計も秀逸です。

 ロイ、リリーナ、ディーク、クラリーネ……個性豊かな仲間たちと紡ぐ戦記は、初めてFEに触れる人にも、シリーズ経験者にも刺さる“王道×戦略”の絶妙なバランス。この記事では、『封印の剣』の魅力や物語、キャラクターの見どころを深掘りし、なぜ今なお人気が衰えないのか、その核心に迫っていきます。

あんそる

ゲームボーイアドバンス懐かしいですね。弱小軍を少しずつ育てて強くしていく面白さはこのゲームの醍醐味ですね。特に「封印の剣」は努力してのし上がっていく物語を体感できる王道のタイトルです。

ファイアーエムブレム封印の剣|徹底解説|概要と魅力

▶ファイアーエムブレム封印の剣|概要

イメージ画像作成:ゲームレビナビ
項目内容
ジャンルシミュレーションRPG(タクティカルロールプレイングゲーム)
開発元インテリジェントシステムズ
販売元任天堂
発売日2002年3月29日(ゲームボーイアドバンス版・日本)
希望小売価格ゲームボーイアドバンス版:4,800円(税別・当時のメーカー希望小売価格)
対応機種ゲームボーイアドバンス(オリジナル)/Wii U(バーチャルコンソール)/Nintendo Switch(Nintendo Switch Online:GBA用ソフトとして配信)

▶ファイアーエムブレム封印の剣|あらすじ

イメージ画像作成:ゲームレビナビ

物語の舞台は、人と竜との大戦「人竜戦役」から数百年が過ぎたエレブ大陸。かつて人々は“封印の剣”と神将器を手に竜族との戦いに勝利し、やがて各地に国々を築き上げました。

その一つ、ベルン王国は優れた軍事力を誇る大国として知られていましたが、新たに即位したゼフィール王の代になってから、周辺諸国への侵攻を開始。エレブ大陸は再び戦乱の炎に包まれていきます。

主人公ロイは、リキア同盟の一国フェレ侯爵家の嫡男。しかし父エリウッドが病に倒れたことから、若くして家督を預かり、小さな「フェレ軍」を率いて戦場に立つことになります。当初は隣国オスティアの軍勢と協力しながら、ベルンの侵略に抗う“防衛戦”が主な役割でしたが、戦いを経るごとに、ロイはリキア全体の指揮を任される存在へと成長していきます。

各地を転戦する中で、ルーグやスー、ディーク、クラリーネ、そして幼なじみのリリーナなど、多くの仲間たちと出会い、ときに別れを経験しながら、ロイは自らの理想と責任の重さに向き合っていきます。

やがて戦争の裏には、人竜戦役にまつわる古い因縁や、竜族の存在をめぐる新たな陰謀が隠されていることが明らかになっていきます。ロイは各地の神将器を求めて旅しながら、ベルン王ゼフィールの真意、竜たちの思惑、そして“封印の剣”に秘められた真実へと迫っていきます。少年領主として始まったロイの戦いは、やがてエレブ大陸の未来そのものを左右する、壮大な戦いへと姿を変えていくのです。

▶ファイアーエムブレム封印の剣|主要なキャラクター

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➀ロイ

クラス
ロード → マスターロード。剣を主武器とする主人公クラスで、移動力は歩兵寄り。序盤は能力が控えめで前に出しづらいものの、終盤に「封印の剣」を得ると攻守が一気に安定し、主力アタッカーとして活躍できるようになる成長型です。

特徴
フェレ侯爵家の嫡男で、若くして軍を率いることになった少年領主。優しく誠実で、敵味方を簡単に切り捨てない理想主義者ですが、戦争の現実を前に悩み、迷い、それでも前へ進む姿が王道の魅力です。周囲の大人たちに支えられながらも、自分の言葉で仲間を導いていく過程が丁寧に描かれます。

役割
物語の中心として、ベルン王国の侵略と竜の因縁に立ち向かう指揮官役を担います。ゲーム的には「敗北条件」になりやすいので安全な運用が大切ですが、終盤は封印の剣で対竜・対強敵の切り札にもなります。ロイをどう育て、どう守るかが攻略の骨格になります。

②リリーナ

クラス
メイジ(炎) → セイジ。高い魔力で敵を焼き払う純魔道士で、物理耐久は低いものの、育てるほど火力が伸びるタイプ。クラスチェンジ後は魔法の幅と性能が増し、後衛エースとして安定します。

特徴
オスティア公女で、明るく芯の強いお嬢様。庶民的な感覚も持ち、立場に甘えず現場で動く行動力があります。ロイとの幼なじみ的な距離感が魅力で、戦乱の中でも彼を支えようとする健気さと、王族としての覚悟が両立して描かれます。

役割
物語面では、オスティアとリキア同盟をつなぐ象徴的存在として、戦争の“政治”を感じさせる役割を持ちます。ユニット面では、対重装・高守備敵への突破口として活躍しやすく、育てれば高火力でボス削りも担当可能。支援でロイを補強する存在にもなります。

③マーカス

クラス
パラディン。剣と槍を扱える高機動の上級騎兵で、序盤から完成された能力値を持つ即戦力。移動力が高く、救出や村訪問、前線の穴埋めまでこなせる万能型です。成長は控えめですが序盤の頼もしさは随一です。

特徴
フェレ侯爵家に仕える老練な騎士で、ロイにとっては父の代からの守役。冷静沈着で礼儀正しく、若いロイの未熟さを補いながら戦場の厳しさも教えてくれます。忠誠心が厚く、ロイを守ることを最優先に行動する姿は“理想の騎士”像として印象的です。

役割
序盤の難所を乗り切るための要であり、弱い序盤ユニットを育てるための“護衛役”としても極めて重要です。高い移動力で目的地点へ急行し、救出連鎖の起点にもなれるため、攻略テンポを大きく左右します。戦力が整ってきた後も、運搬・支援・フィニッシュ役で腐りません。

④アレン

クラス
ソシアルナイト → パラディン。剣と槍を扱う騎兵で、力・速さが伸びやすい攻撃型。追撃を取りやすく、育てれば前線で敵を倒し続けられる主力になります。騎兵の機動力があるため運用もしやすいです。

特徴
フェレ領の若き騎士で、真面目で実直な努力家。規律を重んじ、ロイに忠誠を誓って行動します。相棒のランスとは対照的に、熱さと勢いで突き進む場面もあり、若い騎士らしい未熟さと成長が感じられるキャラクターです。

役割
中盤以降の主力騎兵として、広いマップを駆け回るアタッカー役を担当します。敵陣の側面を崩したり、村救出に向かったり、攻略ルートの自由度を高める存在です。支援関係も含めて育て甲斐があり、ロイ軍の“機動部隊の柱”になりやすいユニットです。

➄ランス

クラス
ソシアルナイト → パラディン。アレンと同じ騎兵ですが、こちらは技・速さ寄りで命中が安定しやすいタイプ。回避も高めに伸びるため、前線で生存しやすく、攻撃の安定感が魅力です。

特徴
フェレの若き騎士で、冷静で落ち着いた性格。アレンの勢いを抑えるブレーキ役でもあり、ロイの判断を補佐する場面も多いです。礼儀正しく、情に厚い一面もあり、戦場での発言から“信頼できる味方”としての安心感が伝わってきます。

役割
安定した命中と機動力で、削り・とどめ・救出支援まで幅広くこなす万能騎兵です。序盤から育てておくと、後半の難しいマップで“計算できる戦力”として頼りになります。アレンと並べて運用すると支援で命中・回避が上がり、騎兵二枚看板として戦線を支えます。

⑥ディーク

クラス
マーセナリー → ヒーロー。剣を主軸に斧も扱える前衛で、加入直後から高い能力を持つ即戦力。速さも高く追撃が取りやすい上、耐久もそこそこあり、歩兵エースとして使い勝手が非常に良いクラスです。

特徴
傭兵団の団長で、荒っぽい口調ながら面倒見の良い兄貴分。金で動く傭兵らしい現実主義を持ちつつも、弱い者を見捨てきれない優しさがあり、ロイの青さに対して厳しくも的確な助言を与えます。戦場の現場感を語れる大人として物語に厚みを加えます。

役割
序盤から中盤の“前線の要”として、敵の主力を削り、若いユニットが育つまで盾にもなってくれる存在です。命中・火力・耐久のバランスが良く、扱いやすさはトップクラス。ロイ軍の歩兵枠の中核として、地形を活かした戦いでも強みを発揮します。

⑦ウォルト

クラス
アーチャー → スナイパー。弓で遠距離攻撃を担当し、飛行ユニットに強い対空要員。序盤は火力不足になりやすいものの、育てれば命中が安定し、遠距離から安全に削れる支援火力として役立ちます。

特徴
フェレの少年弓兵で、ロイに強い憧れを抱く純粋な性格。まだ子どもらしい無邪気さを残しつつ、戦場で役に立ちたいと必死に努力します。ロイやマーカスとの関係から“家族的な温かさ”も感じられ、戦争の重い空気の中で一息つける存在です。

役割
飛行敵の多い場面や、反撃を受けたくない敵を削る場面で光る遠距離要員です。序盤から育てておくと、後半のドラゴンナイトやペガサス対策として仕事が増えます。地形越しに攻撃できる点を活かし、前衛の安全を確保する“戦線の補助役”として機能します。

⑧ルゥ

クラス
メイジ(理) → セイジ。魔力が伸びやすい純魔道士で、守備の高い重装兵にもダメージを通しやすいアタッカーです。耐久は低いですが、射程を活かして安全に削りやとどめを担当できます。

特徴
リキアの小さな村出身の少年魔道士で、幼いながらも礼儀正しく、家族思い。姉ララム(リリーナではなく別キャラ)…ではなく兄レイとはまた違う立ち位置で、無邪気さと芯の強さが同居しています。戦場に出ることへの恐怖も抱えつつ、それでも仲間を守りたいと努力する姿が健気です。

役割
序盤から手に入る貴重な魔法火力として、アーマーナイトや高守備敵の処理を担当できます。育てれば安定した魔力でボス削りにも貢献し、後衛の柱になりやすいです。支援相手との組み合わせ次第で命中・回避も補強でき、計算しやすい魔法ユニットとして軍を支えます。

⑨クラリーネ

クラス
トルバドール → ヴァルキュリア。杖による回復・補助が中心の騎馬ヒーラーで、機動力が高いのが最大の強み。クラスチェンジ後は光魔法も扱え、支援と攻撃を両立できるようになります。

特徴
エトルリア貴族出身のお嬢様で、気位が高くワガママな言動も目立ちますが、根は素直で寂しがり屋。兄クレインとの関係や、戦争の現実を知っていく過程で、少しずつ他者への理解を深めていく姿が魅力です。強烈な個性で会話イベントの記憶に残りやすいキャラです。

役割
高機動ヒーラーとして、前線で傷ついた仲間を素早く回復し、状態異常回復や補助杖で戦況を整える役割を担います。救出や村訪問の補助にも動けるため、攻略のテンポを底上げします。加入が早いぶん育てやすく、終盤でも“困ったらクラリーネ”になりやすい安定枠です。

⑩ルトガー

クラス
剣士 → ソードマスター。高い技と速さで命中・回避に優れ、必殺率が伸びる“クリティカル職人”。耐久はそこまで高くないものの、敵を先に倒して被弾を減らすタイプの最強級アタッカーになれます。

特徴
サカの過去を背負う青年剣士で、寡黙で鋭い雰囲気をまとっています。最初は敵対勢力として登場することもあり、単純な味方ではない影を感じさせるキャラクターです。しかし仲間になってからは、戦場での実力と内面の誠実さが徐々に見えてきて、“静かな信頼”を得ていきます。

役割
ユニットとしては、とにかくボスキラーとして強力で、硬い敵や厄介な指揮官を高確率で仕留められる切り札になります。地形を利用して回避盾としても運用でき、戦線の要所を抑えるのが得意です。支援も含めて伸びしろが大きく、育てるほど“答え”になるキャラです。

⑪ミレディ

クラス
ドラゴンナイト → ドラゴンマスター。飛行・高機動の槍使いで、力・守備が高く、速さも伸びれば抜群の安定感を持つ空のエース。弓弱点はあるものの、それを補って余りある性能を発揮します。

特徴
ベルン王国出身の竜騎士で、国家に忠誠を誓う立場にいながら、戦争の矛盾と残虐さに疑問を抱き、自分の意思でロイ軍に加わります。冷静で真面目、責任感が強く、裏切り者として追われる覚悟を背負う姿が胸を打ちます。敵国出身の仲間というドラマ性も強いキャラです。

役割
加入後は即主力として、地形無視の機動力で戦線を切り開く突破役になります。飛行を活かして増援処理、村救出、ボス急襲など何でもこなし、攻略を“早く安全に”進める鍵となる存在です。物語面でも、ベルン内部の事情やゼフィール軍の実態を示す証言者として重要な役割を果たします。

⑫ファ

クラス
マムクート(竜)。竜石を用いて竜へ変身し、高い能力で戦う特殊ユニットです。変身回数に制限があり、使いどころを選ぶ必要がありますが、変身中は攻守ともに強く、危険地帯を突破する切り札になれます。

特徴
竜族の少女で、無邪気で人懐っこい性格。言葉遣いも幼く、戦争の残酷さを知らないままロイ軍に保護される形で仲間になります。しかしその存在は、人と竜の関係、そして“竜は本当に敵なのか”という作品のテーマに直結し、物語の核心に触れる重要な象徴でもあります。

役割
戦闘面では、変身のタイミングを見極めて前線を支える“切り札枠”として機能します。耐久が必要な場面や、敵が密集する場面で一時的に突破力を上げられます。ストーリー面では、竜族の現状と戦争の真相をプレイヤーに意識させる存在であり、終盤の展開に説得力を与える重要キャラクターです。

⑬スー

クラス
ノマド → ノマディックトルーパー。弓を扱う騎馬ユニットで、移動力を活かしてヒット&アウェイが得意。回避が高く、地形を利用すれば生存しやすい一方、火力は伸ばしていく育成型です。

特徴
サカの草原で育った少女で、自然と共に生きる価値観を持っています。寡黙で落ち着いており、戦争に対しても感情的になりすぎず、静かに自分の役割を果たすタイプ。異文化の仲間と触れ合いながら、言葉の壁や価値観の違いを乗り越えていく姿が魅力です。

役割
機動弓として、飛行敵の迎撃や敵後衛の削り、村救出などで活躍します。騎馬ゆえに救出・運搬に絡めやすく、局所的に必要な場所へ素早く行けるのが強み。スーを育てることで、弓兵の弱点である機動力不足を補い、戦線の柔軟性を高められます。

⑭シン

クラス
ノマド → ノマディックトルーパー。スーと同系統の騎馬弓兵で、こちらは力や技に優れ、火力寄りの運用がしやすいタイプ。移動力を活かした削りととどめが得意で、後衛処理にも向きます。

特徴
サカ出身の青年で、ぶっきらぼうな口調ながら義理堅い性格。仲間や部族への思いが強く、簡単には心を開かない一方で、一度信頼すると徹底して味方を守ろうとします。異国の戦争に巻き込まれながらも、自分の誇りを失わない“草原の戦士”らしい渋さがあります。

役割
機動力を活かして敵の厄介な魔道士や弓兵を先に削り、前線の負担を減らす遊撃役として優秀です。騎馬弓は反撃されにくい位置取りを作りやすく、トラップ解除や村訪問の補助にも動けます。スーと使い分けることで、弓枠が“守り”にも“攻め”にも対応できるようになります。

⑮ギネヴィア

クラス
クラスとしては“NPC王女”ポジションで、基本的にプレイアブルの戦闘ユニットではありません(物語上の重要人物)。戦闘力よりも、ベルン王国の王族としての立場が、物語を動かす力になります。

特徴
ベルン王国の王女で、兄ゼフィールの侵略を止めたいと願う心優しい少女。敵国の王女でありながら、戦争を終わらせるために危険を承知でロイたちに協力します。王族としての責任と、家族への想いの狭間で揺れる姿が切なく、戦争の悲しさを象徴する人物です。

役割
物語面で、ベルン内部の事情やゼフィールの背景をプレイヤーに伝える“鍵”となる存在です。彼女の視点が入ることで、単なる悪役討伐ではなく、国家や家族の歪みが戦争を生むというテーマが強く浮かび上がります。ロイ軍の正義を補強するだけでなく、“敵にも事情がある”という重層的なドラマを成立させる役割を担っています。

▶ファイアーエムブレム封印の剣|魅力

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① ロイの成長を追体験できる「王道ど真ん中の英雄譚」

『封印の剣』最大の魅力は、主人公ロイの“王道主人公”としての成長物語です。彼は最初から無双する超人ではなく、頼れる父を病で失いかけ、不安と責任を抱えながら戦場に立つ、ごく普通の少年領主として描かれます。序盤のロイは、ステータス的にも突出した強さを持っておらず、むしろ周囲の熟練者たちに支えられながら戦線を維持していく立場。しかし、仲間の意見に耳を傾け、民や兵を見捨てず、時には苦しい選択をしながら前に進む姿が、プレイヤーに強い共感を与えてくれます。

物語が進むにつれて、ロイは“フェレの若様”から“リキア同盟軍の指揮官”、最終的には“エレブを背負う存在”へと立場を変えていきます。その過程で交わされる仲間との会話や支援イベントは、彼の優しさや迷い、そして覚悟を丁寧に浮かび上がらせてくれます。クライマックスでロイが封印の剣を手にする瞬間には、それまでの苦難が積み重なってきたからこその感動があり、「ここまで一緒に戦ってきてよかった」と心から思えるはずです。王道ゆえにストレートに刺さる熱さこそが、本作の物語面での一番の魅力と言えます。

② シンプルなのに奥深い、GBAならではの完成された戦略性

『封印の剣』のゲームシステムは、一見すると非常にシンプルです。剣・槍・斧の武器三すくみ、弓による対飛行、魔法同士の相性といった基本要素を押さえるだけで、誰でも直感的に戦い方を理解できます。しかし、その“分かりやすさ”の裏側で、地形効果・命中率・成長率・クラスごとの役割といった要素が複雑に絡み合い、非常に奥深い戦略性を生み出しています。

例えば、森や山に立つことで回避率が大きく上がるため、紙装甲の剣士や弓兵も、配置次第では前線に出せるようになります。一方で、山岳地帯では騎馬が動きづらく、屋内マップでは騎兵が強制的に降ろされるなど、「そのマップに合ったユニット選び」が重要になります。また、命中率がややシビアなバランスに調整されているため、“確率をどれだけ自分に有利な方向に寄せられるか”を考えながら武器や位置取りを工夫することが求められます。こうした要素が組み合わさることで、毎ターンの一手一手に緊張感が生まれ、クリアしたときの充実感もひとしおです。難しすぎず、かといって単調にもならない、絶妙な歯ごたえを持ったSRPGとして仕上がっています。

③ 個性豊かな仲間たちと「支援会話」で深まる人間ドラマ

『封印の剣』には、ロイをはじめとして非常に多くの仲間キャラクターが登場します。傭兵ディークを中心とした傭兵団、天才魔道士ルゥとその家族、エトルリアの貴族出身のクラリーネ、砂漠の民の娘ファ、ベルン王国出身の竜騎士たち……と、出自も性格もバラバラなメンバーがロイ軍に集い、一つの軍として戦っていきます。ただ“数が多い”だけでなく、それぞれに小さな物語や背景が用意されているのがポイントです。

特に、戦闘で隣接させ続けることで解放される「支援会話」は、キャラ同士の意外な一面や関係性を知るうえで欠かせない要素です。硬派に見える傭兵が実は面倒見の良い兄貴分だったり、気の強いお嬢様が不安を吐露する場面があったりと、支援会話を読むことで“ただのユニット”だったキャラに一気に愛着が湧いてきます。また、支援が進むと命中率や回避率、必殺率などに補正がかかり、戦術面でもメリットがあるため、「誰と誰を組ませるか」「どの支援を優先するか」という楽しみも生まれます。お気に入りのキャラを育て、支援を見届けながら戦うことで、プレイヤーごとにまったく違う“自分だけのロイ軍”が完成していくのも、本作ならではの醍醐味です。

④ 分岐マップ&隠し要素が生む高いリプレイ性

『封印の剣』には、プレイヤーの行動や条件達成によって行き先が変わる分岐マップや、特定条件を満たすことで解放される外伝マップが多数用意されています。例えば、どの村を守ったか、どのキャラを仲間にしたか、どのルートを進んだかによって、後半の展開が少しずつ変化していきます。また、各地に眠る“神将器”を集めることで、物語の真相に迫る真エンディングルートに進めるといった隠し要素もあり、1周目では見られなかったマップや会話、ボスとの対峙など、遊ぶたびに新しい発見があるように設計されています。

この構造のおかげで、「ひとまずクリアしたから終わり」ではなく、「次はこっちのルートを試してみよう」「このキャラを必ず仲間にしてみたい」といった“もう1周遊びたくなる動機”が自然と生まれます。難易度も、初見ではやや厳しめに感じる部分があるものの、仕組みを理解していくほどに「今回はこう工夫しよう」と戦略の幅が広がっていくタイプ。お気に入りユニットを主力に据えたり、使っていなかったキャラをあえて育成してみたりと、プレイヤーごとに遊び方を変えやすいのもリプレイ性を高めているポイントです。長く付き合える一本として、じっくり腰を据えて楽しめるタイトルになっています。

⑤ GBA三部作の起点&『烈火の剣』へ続く“歴史的”な一作

『封印の剣』は、シリーズとしては第6作目ですが、GBAでの“新生FE”第一弾としての意味合いが非常に大きい作品です。後に発売される『烈火の剣(海外名:Fire Emblem)』『聖魔の光石』といったGBA三部作の基礎となるゲームデザインが、この作品で確立されました。軽快なドットアニメーションやテンポの良いUI、携帯機に最適化されたマップ構成、支援会話システムの深化など、「携帯機でじっくり遊べる本格SRPG」という路線は、ここから本格的に形になったと言えます。

さらに、『烈火の剣』は“封印の剣の前日譚”にあたり、エリウッドやヘクトルたちの若き日を描くことで、ロイやリリーナの親世代の物語が補完されます。そのため、『封印の剣』を遊んだうえで『烈火の剣』をプレイすると、「あの親がここでこういう選択をしたから、子どもたちがこうなった」というつながりがより深く感じられ、エレブ大陸全体の歴史が一本の大河ドラマのように立ち上がってきます。逆に、烈火から入った人が封印を遊ぶと、「この子があの二人の子どもか!」といった発見があり、キャラクターへの愛着が何倍にも膨らみます。シリーズ全体の流れの中で見ても、『封印の剣』は“遊んでおきたいターニングポイント”といえる重要な一作です。

ファイアーエムブレム封印の剣|徹底解説|まとめ

イメージ画像作成:ゲームレビナビ

 「ファイアーエムブレム 封印の剣」は、GBAでシリーズを“再始動”させた記念碑的タイトルであり、今遊んでもなお「SRPGの王道がここにある」と実感できる一作です。少年領主ロイが、父の病と戦乱の重圧を背負いながら仲間を集め、未熟さと葛藤を乗り越えて指揮官として成長していく物語は、ストレートでありながら胸を打ちます。戦争は英雄だけでなく民や国の都合に翻弄され、敵にも信念や事情がある――そんな“戦記もの”としての渋さも、ロイのまっすぐさをより際立たせる要素になっています。

 ゲーム面では、武器三すくみ・地形効果・命中率の読み合いといった基本がしっかりしており、シンプルなのに奥深いのが最大の強みです。序盤はマーカスやディークのような即戦力で立て直しつつ、アレンやランス、ルトガー、ミレディなど育成枠を鍛えて“自分の軍”を完成させていく感覚が気持ちいい。支援会話でキャラクター同士の関係が深まり、戦術面でも補正が入るため、好きなキャラを軸に部隊を組む楽しみが自然と生まれます。さらに外伝マップや神将器の収集、ルート分岐など、1周目では取りこぼしが起きやすい設計が「次はもっと上手くやりたい」とリプレイ欲を刺激してくれるのも魅力です。

 もちろん、難易度は甘くなく、初見では命中のブレや増援でヒヤッとする場面も多いでしょう。ですが、その“緊張感”こそが、勝ったときの達成感を何倍にもしてくれます。王道の成長物語と、手応えある戦略性、愛着の湧く仲間たち――この三つが高い完成度で噛み合っているからこそ、『封印の剣』は今なお語り継がれる名作です。もし「昔のFEは未プレイ」「GBAの名作を腰を据えて遊びたい」と思っているなら、まずこの一本から入ってみてください。ロイの旅路を見届けたとき、あなたの中にも“封印の剣を語りたくなる理由”が必ず残るはずです。