ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣|過去作を深掘り
ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣をご紹介しています。
1990年4月20日にファミコンで始めてファイアーエムブレムシリーズが誕生したタイトルです。ファイアーエムブレムエンゲージで、過去の主人公が紋章士として登場したのをきっかけに、過去作をもう一度振り返りたくなり深掘りをしていきます。
「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」は、“仲間が死んだら戻ってこない”というシビアなルールと、亡国の王子マルスの戦いを描く重厚な戦記ストーリーで、多くのファンを生み出したシリーズ第1作です。
シンプルながら奥深いシミュレーションRPGとしての戦略性、限られた戦力で一手一手を悩み抜く緊張感、そして命がけで戦う仲間たちへの愛着が、この作品最大の魅力と言えます。
この記事では、暗黒竜メディウスに立ち向かうマルスの物語や、個性的な仲間たち、考えるほどにおもしろくなる戦術要素など、本作ならではのポイントを分かりやすく紹介します
初代FEをまだ遊んだことがない人はもちろん、リメイクや後発作品から入った人にも、「原点として一度は触れてほしい理由」が伝わる内容を目指して解説していきます。
ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣|過去作を深掘り|概要と魅力
▶概要

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ジャンル | シミュレーションRPG(タクティカルRPG) |
| 開発元 | 任天堂開発第一部/インテリジェントシステムズ |
| 販売元 | 任天堂 |
| 発売日 | 1990年4月20日(ファミリーコンピュータ版/日本) |
| 希望小売価格 | 6,000円(ファミコン版・当時のメーカー希望小売価格) |
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ(オリジナル)/Wii・ニンテンドー3DS・Wii U(バーチャルコンソール)/Nintendo Switch(ファミコン Switch Online ほか) |
▶あらすじ

物語の舞台は、大陸アカネイア。かつて「暗黒竜メディウス」によって世界は支配されましたが、若き勇者アンリが神剣ファルシオンを手にこれを打ち倒し、平和な時代が訪れます。しかし百年後、復活したメディウスと邪悪な司祭ガーネフが再び世界征服を開始。ドルーア帝国の侵攻により、主人公マルスの祖国・アリティア王国も戦火に包まれてしまいます。
王・コーネリアスは神剣ファルシオンを携えて前線に向かうも、同盟国グラの裏切りによって討たれ、国は陥落。城に残された王子マルスと姉エリーゼは窮地に追い込まれますが、エリーゼの犠牲によってマルスだけが脱出し、小国タリス王国へと落ち延びます。数年後、亡国の王子として身を潜めていたマルスは、タリスを襲う海賊を退けたことで再び歴史の表舞台へ。タリス王は彼の成長を認め、娘シーダや騎士たちを加えた小さな軍勢を託します。
ここからマルスは、奪われた祖国アリティアと姉を救うため、そしてメディウスとガーネフの支配から大陸を解放するための長い戦いに身を投じていきます。各地の王国を解放しながら仲間を集め、聖なる紋章「ファイアーエムブレム」を受け継ぎ、再び神剣ファルシオンを手に取るにふさわしい英雄へと成長していく──戦記物らしい重厚なドラマが、シミュレーションバトルとともに描かれる作品です。
▶主要なキャラクター

➀マルス
クラス
ロード。剣を扱うアリティア王国の王子であり、主人公ユニット。専用装備ファルシオンを扱う資質を持ち、成長率もバランスが良く、軍の中心として活躍する前提で設計された王道クラス。
特徴
家族と祖国を失いながらも、民と仲間を思いやる優しさを失わない青年。感情を爆発させるタイプではないが、会話の端々から責任感と葛藤が伝わる。近年のシリーズと比べれば寡黙だが、その分プレイヤーが心情を重ねやすい“器”として描かれている。
役割
敗北=ゲームオーバーとなる最重要ユニットであり、常に守るべき存在であると同時に、前線に立って敵を斬り開くエースでもある。シーダやハーディン、ニーナらとの関係を通じて物語を前に進める語り手的役割も担い、大陸解放の象徴として物語の軸に立ち続ける。
➁シーダ
クラス
ペガサスナイト。飛行能力と高い移動力を持ち、槍を装備して戦う女性ユニット。回避性能に優れ、地形を無視して移動できるため、救出や奇襲、説得役の移動要員としても重要なクラス。
特徴
タリス王国の心優しい姫だが、危険な戦場にも自ら飛び込む芯の強さを持つ。敵将や傭兵に対しても偏見なく接し、会話イベントで敵を説得して仲間に引き入れる場面が多い、シリーズ屈指の“人たらし”キャラ。マルスへの想いも物語を彩る要素のひとつ。
役割
高機動の飛行ユニットとして、前線への補給、弱った敵の止め、村や要所への先回りなど、マップ攻略のあらゆる局面で活躍する。さらに多くのリクルートイベントでキーキャラとなるため、彼女をどう動かすかが仲間構成を左右し、戦略面・シナリオ面の両方で欠かせない存在となっている。
③ジェイガン
クラス
パラディン。序盤から登場する上級職の老騎士で、高い守備とそこそこの攻撃力を持ちながら、成長率は控えめという典型的な“ジェイガンタイプ”のクラスデザイン。序盤の盾兼アタッカーとして頼れる性能。
特徴
アリティア王家に長く仕える老騎士で、マルスの教育係兼護衛。厳しくも温かなまなざしで王子を見守り、祖国滅亡の混乱の中でも最後まで王家への忠義を貫く。年齢ゆえの衰えや焦りを抱えながらも、若者に未来を託そうとする姿に渋い魅力がある。
役割
ゲーム開始直後から軍の最前線に立ち、非力な下級ユニットたちを守りつつ敵を削る盾役を担う。育てる主力が揃うまでの“つなぎ”として重要で、プレイヤーに「経験値を誰に与えるか」という考え方を教えてくれる存在でもある。物語的にも、マルスを支える父親的ポジションとして序盤のドラマを支えている。
④カイン
クラス
ソシアルナイト。高い機動力とバランスの取れた能力を持つ騎兵クラスで、剣と槍を扱える万能タイプ。カインは力と素早さが伸びやすく、攻撃寄りの騎士として成長することが多い。
特徴
アリティアの若き騎士で、ジェイガンの部下の一人。熱血漢で正義感が強く、何事にも真正面からぶつかっていく性格。アベルとは幼なじみで、よきライバル同士として描かれることが多く、“赤騎士”のイメージをこの作品で定着させたキャラクターでもある。
役割
序盤から終盤まで主力として使いやすい前衛騎兵。高い機動力を活かして敵の急所を突いたり、救出や囮として動いたりと、マップ攻略の要になりやすい。アベルとのコンビ運用もしやすく、二人で前線を支えることで、プレイヤーに“騎士隊運用”の楽しさと安心感を提供する。
➄アベル
クラス
ソシアルナイト。同じく機動力の高い騎兵クラスだが、アベルは命中率や守備面の安定感に優れており、カインに比べて“堅実な青騎士”として育つことが多い。弓に弱い代わりに、広い移動と武器選択の柔軟さが魅力。
特徴
冷静沈着で物腰の柔らかな青年騎士。カインとは対照的に落ち着いて状況を判断し、サポート役に回ることも多い。恋人エストとの関係など、外伝的なエピソードも含めるとかなりドラマ性の高いキャラクターで、シリーズ全体の物語にも深く関わっていくポジションを担う。
役割
カインと並ぶ主力騎兵として、攻守バランスの取れた働きを見せる。命中率の高さと安定した成長から、前線での削り、止め、救出役といった多様な役割を任せやすい。カインとセットで編成することで、プレイヤーは“二騎体制”による波状攻撃や位置取りの重要性を学ぶことができる。
⑥ドーガ
クラス
アーマーナイト。重装甲と高い守備力を誇る防御特化クラスで、移動力は低いものの前線の壁役として活躍する。槍をメインに扱い、物理攻撃に対して強く出られるのが特徴。
特徴
寡黙で真面目なアリティアの重装騎士。派手な台詞や目立つイベントは少ないが、堅実に前線で敵の攻撃を受け止め続ける姿から、プレイヤーに“無口だが頼れる盾”という印象を残すタイプ。成長させると物理敵にほとんどダメージを通さない鉄壁へと化けるポテンシャルも持つ。
役割
狭い通路や城門前など、敵の進行ルートに立ちはだかる壁役として重要。序盤は特に、脆い弓兵や魔道士を守る存在として欠かせない。移動力の低さゆえに“置き場所”が戦術に直結し、彼をどこで止めるかを考えることで、プレイヤーは防衛ライン構築の面白さを学ぶことができる。
⑦ゴードン
クラス
アーチャー。弓に特化した遠距離攻撃クラスで、反撃を受けずに敵を削れる一方、守備や速さが低く接近戦には弱い。上級職スナイパーにクラスチェンジすると火力と命中が大きく伸びる。
特徴
まだあどけなさの残る新米弓兵で、カインやアベルら先輩騎士たちを慕う後輩ポジション。初登場時は能力も控えめだが、コツコツ育てることで頼もしいスナイパーへと成長していく“育て甲斐のあるキャラ”としてプレイヤーの愛着を集める。
役割
直接戦闘が危険な敵(高攻撃力の斧兵やペガサスナイトなど)を、安全な位置から削る役として非常に重要。命中率の高い弓で敵のHPを調整し、他の仲間にトドメを譲ることで全体の育成をスムーズに進められる。地形を活かした待ち伏せや飛行ユニット対策としても欠かせない存在。
⑧オグマ
クラス
傭兵(マーシナリー)。高い力と速さを併せ持つ前衛クラスで、剣による高火力・高追撃性能が魅力。クラスチェンジ後は勇者としてさらに強力なアタッカーへ成長する、攻撃特化系ユニットの代表格。
特徴
タリス王に仕える傭兵団のリーダーで、過去に奴隷剣闘士だった経歴を持つたたき上げの戦士。荒っぽい口調ながら義理堅く、シーダや仲間のために身を張る姿から、“不器用だが真っ直ぐな兄貴分”として人気が高い。暗い過去を感じさせる設定も、物語に深みを与えている。
役割
加入直後から高い戦闘力で前線を任せられる即戦力アタッカー。命中・火力・速さのバランスが良く、難所の敵将を倒す切り札としても活躍する。彼を軸に傭兵組(ナバールなど)を運用することで、“物理アタッカーの通し方”を学べる、戦力面でも教育面でも重要なポジション。
⑨バーツ
クラス
戦士。斧を扱う攻撃特化の歩兵クラスで、力とHPが高く、命中や守備はやや不安定。序盤から高い火力を発揮できる“パワータイプ”として、敵の数を減らす役割を担う。
特徴
オグマ傭兵団の一員で、粗野だがどこか憎めない兄ちゃんタイプ。単純明快な性格で、難しいことは考えずに目の前の敵をなぎ倒す印象が強い。シリーズ全体で見ても、初期の“豪快な斧使い”像を体現したキャラであり、シンプルに使っていて気持ちのいいユニット。
役割
高い攻撃力を活かして、守備の高い敵やHPの多い敵を一撃で大きく削る役目を持つ。命中の不安はあるものの、当たれば一気に戦況を有利にできるため、ここぞという場面で頼りになる存在。オグマと並んで序盤の物理火力を支え、プレイヤーに“火力偏重ユニットの扱い方”を教えてくれる。
⑩ナバール
クラス
剣士(マイrmドンスレイヤー的立ち位置のソードファイター)。高い速さと技を持ち、クリティカル率に優れる軽戦士クラス。守備やHPは低めだが、回避性能と必殺率で敵を斬り伏せるスタイル。
特徴
寡黙でストイックな流浪の剣士。初登場時は敵として立ちはだかるが、シーダの説得により仲間になるというドラマチックな展開を持つ。無駄な言葉を発さないクールな雰囲気と、その裏にのぞく義理人情が魅力で、“FEのクール剣士枠”の原点の一人として根強い人気を誇る。
役割
攻撃を受けるよりも、速さと回避で“当たらない前衛”として運用するタイプ。必殺率の高い武器を持たせれば、ボス級の敵をも一撃で沈めうる切り札となる。防御が低い分、位置取りや援護が重要で、彼を上手く使いこなすことでプレイヤーの戦術眼が鍛えられる。
⑪マリク
クラス
魔道士。魔法による遠距離攻撃を行うクラスで、物理防御の高いアーマーナイトやドラゴン系に強い。上級職の賢者になると、攻撃魔法だけでなく杖も扱える万能ユニットへと成長する。
特徴
アカネイア出身の若き魔道士で、マルスの幼なじみというポジション。柔らかな雰囲気を持ちながらも、強力なウインド系魔法“エクスカリバー”を託されるなど、その才能は一級品。会話シーンでは落ち着いた口調でマルスを支え、魔道士らしい知性派キャラとして印象に残る。
役割
本作屈指のエース魔道士であり、特に飛行ユニットや高防御の敵に対して圧倒的なダメージを叩き出す。エクスカリバーのおかげで即戦力として活躍でき、魔防の低い敵将を一気に削る役としても優秀。物理中心の軍に“魔法という別の攻め手”を加えることで、攻略の幅を大きく広げてくれる。
⑫レナ
クラス
僧侶。攻撃能力を持たず、杖による回復や補助に特化したサポートクラス。上級職ビショップになると、攻撃魔法も扱えるようになるが、基本的には後方支援がメインの役割となる。
特徴
心優しく献身的なシスターで、戦場で倒れた兵士たちを救いたいという強い信念を持つ。危険を顧みず前線近くまで駆けつけることもあり、その行動力が盗賊ジュリアンとの出会いにもつながる。男性キャラの葛藤や過去を受け止める“癒やし役”としても物語を支える存在。
役割
回復杖を使える数少ない僧侶として、序盤から終盤まで常に出番のある生命線ユニット。味方のHPを安定させることで、前衛が思い切った攻めに出られる環境を作る。高価なリブロ(遠距離回復)など重要な杖を任されることも多く、彼女の生存=軍全体の継戦能力に直結する。
⑬ジュリアン
クラス
盗賊。宝箱の鍵開けや扉の解錠、山岳・砂地の移動に優れる特殊クラスで、戦闘力は控えめだが、攻略面での貢献度が非常に高い。後にソードファイター系へクラスチェンジ可能な作品もある。
特徴
元盗賊の青年で、レナを救うために盗賊団から足を洗おうとしている改心組。軽口を叩きつつも情に厚く、レナを大切に思う一途な姿が魅力的。過去に囚われながらも、誰かのために生き直そうとする姿が、戦乱の物語にささやかな温かみを添えている。
役割
宝箱や扉が多数登場する本作において、鍵開け役としてほぼ必須級のユニット。財宝の回収やショートカットの確保など、マップ攻略の効率を大きく左右する。戦闘面では無理をさせず、地形適性と移動力を活かして後方からのサポートに徹する運用が求められ、プレイヤーに“非戦闘ユニットの守り方”を意識させる存在となる。
⑭ハーディン
クラス
ソシアルナイト/後にパラディン。アリティア軍加入時点から高い能力を持つ中堅~上級の騎兵で、攻守ともに優秀。馬に騎乗した高機動ユニットとして、広いマップでも素早く戦線を駆け巡る。
特徴
アウルス王国の王弟で、“コヨーテ”の異名を持つ勇敢な騎士。祖国を侵略から守るために少数の騎士団を率いて奮戦しており、苦しい状況でも諦めない精神力を持つ。ニーナへの報われない想いなど、その後のシリーズ展開を知っているとより一層切なく映る人物像が魅力。
役割
加入時から即戦力として頼りになる前衛騎兵で、火力・耐久・機動力のすべてが高水準。一時的にはマルス軍の共同リーダー的な立ち位置で、戦略面でも物語面でも大きな存在感を放つ。彼の参加によって一気に戦力バランスが整い、中盤以降の攻略が安定するため、プレイヤーにとって心強いターニングポイントとなるキャラ。
⑮ミネルバ
クラス
ドラゴンナイト。ペガサスナイトよりも攻撃力と耐久に優れる飛行クラスで、斧や槍を扱いながら高い機動力を発揮する。弓に弱いという弱点はあるものの、地形無視の移動と火力で敵陣を切り裂くことができる。
特徴
マケドニア王国の王女であり、ワイバーンを駆る精強なドラゴンナイト。弟妹たちを想いながらも、侵略側の軍に組み込まれてしまった苦しい立場にあり、やがてマルス軍側へと心を決めるまでの葛藤が描かれる。高潔で責任感が強い一方、家族への情も深いという、多面的な魅力を持つ女性騎士。
役割
加入時点から非常に高い戦闘力と機動力を誇る飛行エースとして、終盤マップの主力に数えられる。敵陣背後への奇襲、要所の速攻制圧、救出や輸送など、戦略の幅を大きく広げるキーキャラ。敵としても味方としても存在感が大きく、マルス軍に“空からの強襲”という新たな選択肢を与えてくれる重要な戦力となる。
⑯チキ
クラス
マムクート(神竜族)。人の姿をとる竜族で、竜石を装備することで強力なドラゴン形態に変身できる特殊クラス。防御・攻撃ともに高水準で、一人で前線を支えられるポテンシャルを持つ。
特徴
神竜ナーガの娘でありながら、見た目は幼い少女というギャップのあるキャラクター。長い眠りから覚めたばかりで世間知らずな一面を見せるが、純粋で人懐っこく、マルスに強い信頼と好意を寄せる。過去と種族ゆえに背負った宿命は重く、その存在自体が物語世界のスケールを大きく広げている。
役割
竜石を用いた変身中は驚異的なステータスを誇り、物理・魔法の両面で敵軍に圧倒的なプレッシャーをかける切り札ユニット。竜石の使用回数には限りがあるため、どのマップ・どの局面で投入するかの判断が重要になり、プレイヤーに“リソースの温存と切り時”を考えさせる存在でもある。
▶作品の魅力

① シリーズ原点の重厚な戦記ストーリー
本作の大きな魅力は、「亡国の王子マルス」が、崩壊した祖国を取り戻すために各地を転戦していく“戦記もの”としての物語の厚みです。序盤からいきなり祖国の滅亡と家族の死、仲間の裏切りが描かれ、プレイヤーはマルスと同じく、失ったものの大きさを噛みしめながら戦いへ踏み出すことになります。
章ごとに国や立場の異なる人々と出会い、「なぜ戦うのか」「誰のために剣を取るのか」といったテーマが、派手なイベントではなく会話や戦場の状況から静かに伝わってくる構成も秀逸です。後のシリーズでおなじみとなる“国同士の戦争劇+個々のドラマ”という骨格が、この時点でしっかり形になっているのも、シリーズファンにとっては見逃せないポイントです。
② シミュレーションRPGとしてのシンプルで奥深い戦略性
マップ上のユニットを1体ずつ動かし、地形や武器の相性を考えながら戦うターン制バトルは、現在の基準から見ると素朴ながら、その分ルールが分かりやすく“戦略性そのもの”を楽しめる作りになっています。歩兵・騎馬・飛行・弓兵などの特性を理解し、敵の射程や増援のタイミングを読むことで、少数精鋭でも不利な戦況をひっくり返せることも。
本作は難易度も高めで、油断して前に出し過ぎるとあっという間にユニットが倒されてしまうため、「1ターン先」ではなく「2~3ターン先」を見据えた配置が重要になります。派手なスキルや演出に頼らず、“駒の動かし方”そのものが勝敗を分ける、ボードゲームに近い感覚の戦略性が味わえるのが魅力です。
③ 仲間キャラの個性と「ロスト」が生む緊張感
ファイアーエムブレムと言えば、一度倒れた仲間が基本的に復活しない「ロスト(永久離脱)」のシステムが有名ですが、その原点が本作です。ナイト、ペガサスナイト、盗賊、魔道士など、能力も背景も異なる仲間たちは、会話量こそ近年作ほど多くないものの、「このキャラは前線の壁」「この子は絶対に守りたいヒーラー」など、戦いを重ねるごとに自然と愛着が湧いてきます。
だからこそ、うかつな一手で彼らを失ってしまったときの喪失感や後悔はひとしおで、プレイヤーの中に「このメンバーで最後まで行きたい」という強い動機を生み出します。キャラの“死”がそのままプレイに跳ね返ってくる緊張感は、シミュレーションRPGとして唯一無二の体験と言えます。
④ 育成とクラスチェンジの楽しさ
本作には経験値を稼いでレベルアップし、一定条件でクラスチェンジするという成長要素があり、「どのユニットに経験値を集中的に与えるか」というリソース配分の悩ましさが楽しさにつながっています。序盤は弱くて頼りないユニットでも、丁寧に育てていくことで、終盤の戦力として欠かせない存在になっていく過程はまさに“育成の醍醐味”。
クラスチェンジによって見た目や能力が大きく伸びた瞬間の達成感も格別です。また、本作はステータスの数値やスキルが比較的シンプルなため、「強さの理由」が直感的に分かりやすく、シミュレーションRPG初心者でも育成の面白さを感じ取りやすい作りになっています。「このキャラをエースに育てたい」という目標を決めて遊ぶと、周回プレイでも毎回違う味わい方ができるのもポイントです。
⑤ シリーズファンなら一度は触れたい「原点」としての価値
現在まで続く長寿シリーズの第一作だけあって、「暗黒竜と光の剣」には後の作品につながる多くの“始まり”が詰まっています。マルスやシーダをはじめとするアカネイア勢のキャラクターたち、ファルシオンとファイアーエムブレムの設定、クラス構成や武器バランス、ロストシステムなど、シリーズの基本要素がどのように生まれたのかを体感できるのは、本作ならではの魅力です。
システム面では不便な部分もありますが、そのぶんルールが研ぎ澄まされており、「シミュレーションRPGの骨格」を学ぶ教材としても非常に優れています。リメイク作品『新・暗黒竜と光の剣』や後年のタイトルをプレイしたことがある人ほど、「ああ、この要素はここから始まったんだ」と発見しながら楽しめる、“シリーズの原点巡礼”として価値の高い1本です。
ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣|過去作を深掘り|まとめ

「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」は、今遊ぶとグラフィックや操作性こそシンプルですが、“仲間が死んだら戻ってこない”という緊張感と、亡国の王子マルスが大陸を救うまでの王道戦記がギュッと詰まった、まさにシリーズの原点と言える一作です。派手な演出や膨大なテキストがなくても、一人ひとりの仲間の重みや、一手のミスが取り返しのつかない結果につながる怖さが、プレイヤーの想像力を刺激し、いつの間にか物語の中に引き込んでくれます。
また、ルールやシステムがシンプルだからこそ、「地形を活かす」「敵の射程を把握する」「誰を育て、誰を守るか」といった戦術の基本がとても分かりやすいのもポイントです。最近のシリーズで複雑なスキルや育成に慣れている人ほど、「FEの戦略って、実はこういうシンプルな駆け引きから始まったんだ」と新鮮に感じられるはずです。
もちろん、難易度の高さやUIの不便さなど、今の基準で見ると遊びにくい部分もありますが、それを補って余りある“遊びごたえ”と“歴史的価値”が本作にはあります。リメイク版や後発作品から入った人が原点を知る意味でも、シミュレーションRPG好きが基礎を学ぶ教材としても、一度は触れてほしいタイトルです。この記事で興味を持ったなら、ぜひマルスたちとともに、大陸アカネイアの戦いを自分の手で体験してみてください。



















